圖書標籤: 社會史 日本漢學 近代史 日人漢學
发表于2024-12-27
中國伝統社會のエリートたち pdf epub mobi txt 電子書 下載 2024
科挙によって穿たれたエリート階層への道筋。しかしその道は今日の學歴社會と同様、科挙閤格者を齣す階層のエリート再生産システムによって世代継承されるものでもあった。族譜や文獻の詳細な分析で示す、ユニークな歴史解釈。
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まえがき
中國の歴史に多少なりとも関心のある人ならば、科挙と呼ばれる製度について何がしかの知識を持っておられるだろう。隋代に起こり清代の末期まで、実に1300餘年の長きにわたって実施された官僚選抜製度であり、高校の世界史の教科書にも必ず登場するものだ。歴史に関心がなくとも、例えば現代の中國における受験競爭の過熱ぶりを伝えるニュースなどで、その歴史的背景のひとつとして言及されるのを耳にする機會もあるかもしれない。それほど科挙は、中國の伝統社會を特徴づける製度として人口に膾炙してきた。しかしその製度に比べ、製度下に生きた人びとの実態については、あまり知られていないようだ。
世襲によらず、ほぼ全ての階層の男性に受験資格が與えられる試験によって、國政を擔う高級官僚を選抜する科挙は、同時期の他の世界に類例を見ないその開放性に特徴がある。それゆえ、この製度がもたらす階層流動性に対する研究者の関心は大きく、科挙官僚が政界の主流となった宋代以降については、既に少なからぬ研究の蓄積がある。本書序章で詳述するように、その階層流動性はかなり限定的であり、特に科挙が學校製度を包閤して整い、応試者が量的に拡大する明代の半ばから清代にかけて、科挙の閤格者は特定の傢係に集中し、事実上の「世襲」傾嚮にあったとする議論が、現時點では優勢である。
では、人びとのどのような行動が、製度の階層開放性を低下させたのだろうか。本書は、明清期に代々科挙閤格者を輩齣し続けたある傢係を対象に、彼らが殘した傢係記録である族譜から得られるデータの統計分析と、伝記や年譜あるいは地方誌などの文獻資料の記述とを総閤して、科挙閤格者が再生産されるメカニズムの解明をメイン・テーマとする。
第1章は主な資料とする族譜の資料的な特性について述べる。族譜はヨーロッパの教區文書や日本の宗門改帳と並んで、近代以前の社會においては稀少な統計分析が可能なデータを得られる資料として、歴史人口學などの分野で注目されてきた。しかし、日・歐の資料とは異なり、女性や下層成員のデータの欠落が欠點として指摘されている。このような性・階層によるデータの差異は、成員の顕彰という族譜本來の編纂趣旨に基づくものであり、その特性に適った利用が求められる。この點、前近代中國で最も顕彰に値する事績とされた科挙閤格者たちに関して、族譜は豊富なデータを提供してくれる。
族譜情報のデータ化と統計分析に方法は、第2章に詳しい。科挙地位の継承度はオッズ比で錶わされる。測定値には「カイ二乗検定」などの検定を加えて測定結果が充分な有意確率で実証され得るかどうかを確認し、どのようなファクターが次世代の科挙閤格に統計的に有意な差をもたらしたのかが決定される。
続く第3~5章では、明清期に代々科挙閤格者を輩齣した江蘇省常州の一族を事例として分析の実際を示している。父・祖父からの地位継承度の強さ、母や姉妹の重要性は、統計分析を経て明確に実証された。また、文人畫傢の祖父や父を持つ息子の閤格率が有意に高い。このような統計分析の結果を導き手として、族譜や地方誌の記述資料を探索すると、そこには傢係に継承されたさまざまな「文化資本」と、それら「資本」の時宜に適った戦略的な「投資」の様が浮かび上がって來る。よく知られているように、「文化資本」は現代フランスの社會學者、ブルデューによる文化的再生産理論の中核をなす概念だが、儒學古典の教養と詩文作成能力という、まさに文化的優位性によって選抜された科挙エリートたちの分析にも有用な概念であると思われる。
第6章では、科挙エリートたちと異なる「文化資本」を継承した階層として、19世紀初頭より地方に颱頭した在地エリート層について、やはり常州の事例をとりあげる。彼らは地域における災害救援、水利などのインフラ整備などの公益活動を積極的に擔い、これら「善挙」と呼ばれた活動を足がかりに地域の名望傢としての地位を確立して行く。彼らの活動は、城內に居住する科挙エリート層に対抗的な「郷居慷慨」、すなわち郷村に居住し、世の中の不義・不正に憤るというハビトゥスと共に、傢族の間で継承され、やがて清代末期には地方における政治・文化を主導する勢力として成長する。ここでは、受け継いだ「文化資本」であるハビトゥスが正統文化を相対化し、固定化した階層ヒエラルキーを流動化すべく「投資」されており、「文化資本」は階層を固定化する作用のみを持つとは限らない事例が提示される。
科挙は朝鮮、ヴェトナムなどアジアの近隣諸國で採用されたばかりでなく、宣教師たちによってヨーロッパにも伝えられ、近代のエリート選抜製度の成立に少なからぬ影響を與えた。科挙はいわば世界大に拡がった現行の、公開試験による選抜製度の淵源といえるものである。その製度下において、人びとがどのようにふるまい、どのように製度を変貌させていったのか。ひとり中國のみならず、世界史の貴重な財産として私たちみなが共有すべき歴史的経験であると思う。本書がその共有の一助となれば、望外の喜びである。
本書は2008年3月に立教大學に提齣し、同年9月に博士(文學)の授與を受けた學位申請論文に若乾の加筆修正を行ったものである。各章のうち、既発錶部分の初齣は以下の通りであるが、いずれも學位申請論文としてまとめるに際して大幅な修正を施しているため、本書収録のものとは別の論考として參照していただきたい。
倉橋圭子(くらはし けいこ)
1957年東京都生まれ。1998年放送大學教養學部卒業後、お茶の水女子大學大學院人間文化研究科(博士前期課程)修瞭。2008年立教大學大學院文學研究科(博士後期課程)期間満瞭退學。博士(文學)。現在、立教大學非常勤講師。専門は中國社會史。
主な論文に、「近代宗譜考」『係図が語る世界史(シリーズ歴史學の現在8)』(2002年、青木書店)、「明清期『世傢』の形成と女性の役割」(『お茶の水史學』50號)、「科挙エリートの再生産」(『史苑』第69號)などがある。
評分
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