まえがき
序章
第1節 本書の目的
第2節 改革開放期の宗教復興の潮流
1 1970年代以降の宗教復興
2 改革開放期の「宗教狂熱」
3 現代中国の宗教復興に関する研究
第3節 共同体理論と中国研究
1 共同体理論の研究動向
1-1 コミュニティ研究の静態的モデルとその批判
1-2 ポストモダン人類学以降の共同体理論
2 共同体論争
2-1 戦後日本の共同体理論
2-2 中国研究における共同体論争
3 関係主義(guanxi-ism)――中国社会の結合原理
第4節 現代中国における少数民族の自治
1 改革開放期の「自治組織」
2 民族区域自治の成立過程と限界
3 民族区域自治をめぐる議論
4 中国社会の二重自治論――清水盛光のモデル
第5節 中国イスラーム研究と回族の民族誌
1 戦前・戦後の中国イスラーム研究
1-1 戦前の回教研究
1-2 中国における回教・回族研究
1-3 戦後日本の回族研究
1-4 欧米の人類学者による現地調査
2 ネイティヴ人類学者による批判
2-1 米国人グラドニーの民族誌
2-2 ネイティヴ人類学者からの批判
3 ジャマーア・モデルの可能性
第6節 おわりに
第1部 現代中国の民族・宗教・社会主義
第1章 中国西北のイスラームと寧夏回族の社会生活
第1節 中国におけるイスラームの伝播と土着化
1 イスラームの伝播・拡大と「回民」の形成
2 寧夏回民の起源と形成
3 中国イスラームの伝統教育と「教派」の形成
第2節 現代中国の回回民族
1 現代中国のムスリム諸民族
2 回族のエスニシティ
3 回族の伝統儀礼
3-1 宗教儀礼
3-2 祝祭行事
3-3 通過儀礼
4 回族の親族カテゴリー
4-1 「家」
4-2 「親戚」
4-3 親族名称・呼称
第3節 寧夏回族自治区の概況
1 寧夏回族自治区の地理環境と経済状況
2 銀川市の基本状況
第4節 清真寺の分布とジャマーアの規模
第5節 清真寺付近の行政機関・居民委員会と住民
1 清真寺付近の土地改革と階級区分
2 清真寺の周囲に集住する回族
2-1 民族別世帯――世帯主の民族戸籍
2-2 世帯間の親族関係
2-3 世帯構成
第6節 まとめ
第2章 中国共産党の民族・宗教政策と回族社会
第1節 はじめに
第2節 中国共産党の民族理論と「回族」の民族認定
1 中国共産党と西北回民の遭遇
2 長征期の回民工作
3 「回族」の民族認定
第3節 中華人民共和国成立後の社会主義建設と政治運動
1 1949年建国当初の優遇政策
2 宗教制度民主改革と回民座談会の開催
3 文化大革命という名の同化政策
第4節 改革開放期の民族・宗教政策の転換
1 鄧小平時代の民族・宗教政策の軌道修正
2 江沢民時代の「愛国主義」宣伝と宗教関連法規の制定
3 胡錦濤時代の「和諧社会」と宗教事務条例
第5節 寧夏回族自治区における民族・宗教政策の再開
第6節 おわりに
第2部 国家権力と清真寺
第3章 清真寺の伝統秩序と権力構造
第1節 はじめに
第2節 世襲化した伝統的指導層
1 清真西関寺の歴史
2 西関寺の周囲に集住する回族
3 歴代の宗教指導者
4 西関寺の地元有力者
第3節 新興指導層の台頭
1 現場復帰した宗教指導者たち
2 清真寺民主管理委員会の選出
3 周縁化した寄宿学生
4 宗教指導者の解任
第4節 清真寺の主導権をめぐるせめぎあい
1 宗教指導者の招聘をめぐる揉め事
2 清真寺の内部分裂
3 儀礼執行の主導権をめぐる駆け引き
第5節 おわりに
第4章 清真寺に介入した国家権力――共産党・行政・宗教団体・清真寺の共棲
第1節 はじめに
第2節 国家・社会関係論
第3節 中国イスラーム教協会の成立と活動
1 設立趣旨と任務
2 主な活動内容
3 組織構成
第4節 寧夏回族自治区イスラーム教協会の成立と活動
1 設立趣旨と任務
2 主な活動内容
3 組織構成
第5節 清真寺の記念行事に招待された党幹部たち
1 清真寺の宗教指導者の就任式典
2 就任式典の裏側
第6節 共産党・行政機関・宗教団体の共棲
1 共産党・行政の「指導」と宗教団体の「協力」
2 共産党員の存在
3 宗教団体の「自律性」
第7節 おわりに
第3部 変貌する宗教儀礼と民族文化
第5章 異端視される死者儀礼――イスラーム改革の理想と現実
第1節 はじめに
1 儀礼の「正統性」をめぐる論争
2 イスラーム改革という概念
第2節 回民墓地
1 現代中国の葬儀改革
2 回民墓地
第3節 死者儀礼の準備
1 死者と遺族
2 葬儀の主宰者
3 服喪――「戴孝」
第4節 葬送儀礼
1 死のとらえかた――「帰真」
2 遺体の沐浴――「洗埋体」
3 贖罪儀礼――「転費達耶」
4 葬送礼拝――「站者那則」
5 埋葬――「下埋体」
6 死者祈念儀礼――「過貼」
第5節 イスラーム改革と死者儀礼
1 中国西北におけるイスラーム改革
2 イフワーン派の学説
3 寧夏のイスラーム改革
3-1 虎嵩山
3-2 馬福龍――銀川市のイフワーン派
第6節 異端視される儀礼
1 イフワーン派が唱える儀礼改革
2 イスラーム改革の現実
第7節 死者の救済と生者の威信のために
1 イスラーム改革の形骸化
2 宗教的権威と生活の便宜
第8節 おわりに
第6章 異民族には嫁がせない――民族内婚とその変容
第1節 揺らぐ民族内婚
第2節 民族別居住分布と通婚関係
1 清真寺周辺の居住分布
2 地元住民の通婚圏
第3節 増加する異民族間通婚
1 大都市の回漢通婚
2 銀川市中心地の回漢通婚
第4節 漢族男性と結婚した回族女性――共産党員の選択と苦悩
第5節 民族内婚の論理
1 イスラーム改宗への疑念
2 食の規範の遵守
3 異民族間の贈答慣行
4 子どもの民族戸籍
第6節 集団の規制と個人の選択
第7章 酒がならぶ円卓――婚礼にみる回族の「漢化」
第1節 はじめに
第2節 民俗生殖理論と婚姻規制
1 民俗生殖理論
2 回族の「同姓不婚」
3 婚姻形態
第3節 おなじ民族と結婚する作法
1 仲人――「媒人」
2 お見合い――「相親」
3 縁談の申し出――「提親」
4 婚約――「道喜」
5 結婚式――「念尼卡哈」
6 結婚披露宴――「婚宴」
7 花嫁の里帰り――「回門」
第4節 豪華な婚礼、酒を飲む回族
1 宴席を避ける清真寺関係者たち
2 結婚当事者の「漢化」あるいは脱イスラーム化
3 ムスリムの夫婦になるための婚礼
4 婚礼という名の権力ゲーム
第5節 おわりに
第4部 中国イスラーム界に流布する愛国主義
第8章 統制される宗教、脱宗教化される民族
第1節 清真寺に浸透する愛国主義
1 「愛国愛教」を叫ぶムスリムたち
2 「愛国は信仰の一部」なのか?
3 「紅色阿?」の台頭と影響力
第2節 党国家の統制下におかれた宗教活動
1 イスラーム教経学院の成立と運営――イスラーム教育の官営化
2 党国家の管理下にあるメッカ巡礼
3 非合法化された宣教活動――タブリーグの浸透と拡散
第3節 イスラームを放棄した共産党員
1 ムスリム少数民族の共産党員
2 ある共産党員の火葬
3 死者の背景
4 火葬への猛烈な反発
5 火葬に抗する論理
第4節 「民族」と「宗教」の狭間で揺れ動く
1 イスラームを放棄した回族
2 死者の「人民化」
3 「戸籍回族」と揶揄される人びと
第5節 おわりに
第9章 「右派分子」から殉教者へ――政治運動に翻弄された宗教指導者
第1節 文化大革命と少数民族
第2節 中国共産党の政治運動とムスリム少数民族
第3節 ある宗教指導者の事例
1 陳克礼の生い立ち
2 中国イスラーム教経学院の反右派闘争
3 帰郷
4 文化大革命
第4節 「右派分子」となった理由
1 陳克礼の「問題点」
2 ムスリム社会内部の葛藤
第5節 改革開放期の再評価
1 名誉回復
2 殉教者としての再評価
第6節 名もなき証言者たち
終章 現代中国における「イスラーム復興」のゆくえ
第1節 近現代中国における国家権力と清真寺
第2節 社会主義を経験した回族
1 現代中国の民族・宗教・社会主義
2 党国家と清真寺の力関係
3 宗教儀礼・民族文化
4 中国共産党の政治宣伝とイスラーム界の反応
第3節 現代中国のジャマーア・システム
1 清真寺内部の権力構造
2 ジャマーアの結合原理
3 清真寺を越えるネットワーク
第4節 保存される清真寺、溶解するジャマーア
参照文献一覧
あとがき
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收起)