日本支配下の旧満州、大連近郊で独身の老ロシア人富豪ペトロフが殺害された。財産目当ての犯罪―鬼貫警部は三人の甥とその恋人を追及する。しかし、そこには堅固なアリバイが立ちはだかっていた！大動脈・満鉄時刻表の行間にそそがれる鬼貫の執拗な視線と緻密な推理。時刻表ミステリーを拓いた巨匠のデビュー作を、実際の時刻表をもとに補筆された決定稿に、松野一夫画伯の挿絵を添えて贈る。

鮎川 哲也（あゆかわ てつや、1919年2月14日 - 2002年9月24日）は、日本の推理作家。

本名は、中川 透（なかがわとおる）。東京都生まれ、中国・大連育ち。拓殖大学商学部卒業。 別名に那珂川透、薔薇小路棘麿、青井久利、中河通、宇田川蘭子など。

いくつかの作品では本文中に時刻表が挿入されるなど、特に「アリバイ崩し」の作風で知られるが、純粋な犯人当てパズラーも多い。

作中で活躍する探偵役としては、鬼貫警部、星影龍三、三番館のバーテン。大地康雄主演の単発ミステリドラマ「刑事・鬼貫八郎シリーズ」は、この鬼貫警部をモデルとしている。

また、今日では忘れられている戦前の作家・作品を数多く発掘するなど、優れたアンソロジストでもあった。

1948年 - GHQ勤務のかたわら、『ロック』1月号に「月魄」（那珂川透名義）、8月号に「蛇と猪」（薔薇小路棘麿名義）を発表。

1950年 - 『宝石』100万円懸賞の長篇部門に『ペトロフ事件』（本名の中川透名義）が入選したが、『宝石』の発行元である岩谷書店の経営不振により賞金の支払いは棚上げされた。しかし鮎川は当時結核の治療費の支払いに窮していたため、頑強に賞金を請求。このことが岩谷満社長の怒りを買い、鮎川はその後長きにわたって『宝石』から締め出された。

1956年 - 講談社の『書下ろし長篇探偵小説全集』の第13巻に『黒いトランク』で応募し、当選。筆名を鮎川哲也に改める。

1960年 - 『憎悪の化石』と『黒い白鳥』により、第13回日本探偵作家クラブ賞（後の日本推理作家協会賞）を受賞。

1988年 - 東京創元社の『鮎川哲也と十三の謎』シリーズ刊行開始。第12巻として予告された『白樺荘事件』の刊行が期待されていたが、未完となった。

1990年 - 東京創元社の主催により長編推理小説新人賞鮎川哲也賞が開始される。

2001年 - 第1回本格ミステリ大賞特別賞を受賞。