この小説はゲーム「真・女神転生デビルサマナー」をベースにした小説「封印されし魂」の外伝。作者は涼風涼（すずかぜりょう）。1996年9月28日発行（奥付より）。アスペクトよりファミ通ゲーム文庫として発売された。カバーイラストは金子一馬、挿絵は副島成記による描き下ろし。 舞台は古代の日本で、デビルサマナー本編で吾妻教授によって語られていたイナルナ姫の国と、倭の統一を目指す大和との戦いの様子が綴られている。日本神話にある逸話をモデルに、逆の立場から描かれている。

主な登場人物

アン女王

秦氏の国の女王。大陸より倭に渡来して来た一族の子孫。女王の家系は代々不思議な霊力を持っているために周囲の国々から一目を置かれ、小国ながら他国からの侵略を退けてきた。

イナルナ姫

アンの娘で、秦氏の国の姫君。母親同様に不思議な力を持っており、精霊と心を通わせることができる。『デビルサマナー ワールドガイダンス』によると漢字表記は「伊那瑠奈」。

エンキ

アン女王の側近で秦氏一の武人。イナルナ姫との結婚を望んでいる。

ドゥムジ

秦氏の民。狩りで生計を立てている青年。入ってはいけないとされる祭祀場に踏み込んで狩りをしていたことから、偶然イナルナ姫を助ける。

長髄彦（ナガスネヒコ）

隣国、生駒の国王。長身で澄んだ声をしている。秦氏と協力して大和に対抗しようとする。

饒速日（ニギハヤヒ）

長髄彦の義理の弟で鬼神のような強さを誇る。白い狐を従えている。

登美夜毘売（トミヤビメ）

長髄彦の妹にして饒速日の妻。太占（フトマニ）という占いを行う呪術師。

大和の大王（やまとのおおきみ）

西から各地の豪族を従えつつ東征している大王。強大な武力を誇り、全国統一を目論んでいる。傘下に加わらない国は容赦なく攻め滅ぼす。

アン・イナルナ・エンキ・ドゥムジといった秦氏の国の人名はシュメールの神話から取られており、これは秦氏の祖先がシュメールからの移民であるという裏設定によると思われる。太陽神アン・金星の女神イナンナ・水の神エンキ・牧羊の神ドゥムジがその由来と思われる。

内容（「BOOK」データベースより）

古代にあったとされる、秦氏の国。久美子は、ある日を境にその王国の姫、イナルナの夢を見始める。そして、恋人とよく似たドゥムジという青年と出会い、惹かれ合う。これは夢か現か?イナルナは、私?イナルナの追体験をしながら、久美子は自分自身が、何者かに徐々に支配されていくのを感じる。誰も知らないイナルナの哀しい物語が始まる。

涼風 涼（すずかぜ りょう）は日本の小説家、シナリオライター、漫画原作者。新潟県新潟市生まれ。高校卒業後、様々な専門学校を転々とした後に『真・女神転生デビルサマナー』のノベライズで作家デビュー。別名義で漫画原作も手がけている。