すぐれた造形性をそなえた漢字の美を発見し、蕓術としての「書」を確立したのは六朝人であった。漢帝國の崩壊は儒教的規範から人間を自由にし、六朝人は、人間のあらゆるいとなみに価値をみいだしたからである。王羲之は「書聖」とよばれている。しかし、書聖王羲之、それは彼の全體像の一部分にしかすぎない。彼の書は、貴族にふさわしい教養のひとつとしてあったのである。本書は王羲之の人となり、生活、思想および生きた時代を語り、彼を通じて四世紀の中國を生きた一知識人の全體像を生き生きと描いた。
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